勢いで条例が決まる事 〜「子どもを犯罪の被害から守る条例」より〜

奈良で起きた女児誘拐殺人事件(※1)をきっかけに奈良県児童ポルノの所持禁止を
含めた、「子どもを犯罪の被害から守る条例」が可決、今年7月から施行されましたが
ついに所持関連で適用者が現れました。

児童ポルノ禁止の条例を初適用 奈良県警、書類送検へ京都新聞

奈良県警少年課と奈良西署は9日、児童ポルノを所持していたとして、県の「子どもを犯罪の被害から守る条例」違反の疑いで同県生駒市の無職男性(23)を書類送検する方針を固めた。同条例の適用は初めて。
(中略)
 調べでは、男性は自宅の部屋に、13歳未満の女児を撮影したポルノDVD1枚を持っていた疑い。県警は今月初め、自宅を家宅捜索し、成人のポルノを含む百数十点を押収した。

奈良「こども条例」を初適用 児童ポルノ所持で書類送検へ毎日放送

ここで懸念するべき問題として逮捕押収に至る経緯が殆ど覆い隠されている事、
そして条例で定められている密告義務が一因ではないか?と言う事です。

「子どもを犯罪の被害から守る条例」(PDF)より

(禁止行為に係る通報)
第14条第11条又は第12条の規定に違反したと認められる者を発見した者は、保護
監督者又は警察官に通報するよう努めなければならない。この場合において、通報を受
けた保護監督者は、警察官に通報するよう努めなければならない。
2 前条の規定に違反したと認められる者を発見した者は、警察官に通報するよう努めな
ければならない。

もしこれを悪用すれば、気に入らない近隣住民に対して
条例で定められている子どもポルノをこっそりと仕込んで
通報し、前科者に仕立て上げる事も可能
な事を改めて
証明しかねないことを示したと言えます。

ところで、最近は「地方が国を変える」とばかりに現行の法律の枠を
超えた条令が各地方自治体から出ていますが、先に述べた奈良の条例や
先日可決された鳥取の人権擁護条例に代表されるように必要かもしれないけど
きちんとした議論や運用された際のリスクも含めた調査を行わず可決ありき、
利権ありき、問題提起ありきとばかりに勢いだけで決めてしまうケースが
多いように感じます。(奈良の条例もパブリックコメントを募集したのみで
何の議論も無いまま可決してしまいました。)

と共に単純に条例や法律を作った所で問題が解決するどころか
内容次第では警察や法律・条例で作られた団体を肥え太らすだけで
よくマスコミから糾弾される箱物行政と何ら変わりが無いですし
問題が解決されずブラックボックス化しかえって悪化してしまう事も
考えなければいけません。

それ以上に地方自治体が出す条例もなし崩しに受け入れた場合
内容によってはかえって生活を脅かす可能性があることを受け止め
そのような条例の動きがあったら動向を注視して行ったほうがいいのかも
しれません。

※1 事件以前から内容が決まっていたみたいですが・・・【関連】
子ども安全条例が施行されました奈良県

■奈良県「子どもを犯罪の被害から守る条例(案)」ARC 平野裕二のサイト